転職したい
第5回 医療法人白十字会 理事長 富永雅也氏インタビュー
経営者インタビュー
そのときあなたは必要とされる自信がありますか?
2012年度をめどに介護療養病床が廃止。
そうなれば、1万人の療養病床担当医のうち、6,000人が不要になる時代がやってきます。そのときあなたは、療養病床担当医として、必要とされる自信がありますか?
今回は富永理事長に今後の介護療養病床についてお話しいただきました。
とても怖いお話しだったのですがそんな状況の中、早めの転身をされて、
成功された先生もいらっしゃると伺いました。
富永理事長のインタビューの後に、その石橋先生のインタビューを掲載しております。
転身当初は、「外科医として培ってきたスキルが98%役に立たない」
おっしゃっていた石橋先生。その戸惑いを乗り越えて、大きなやりがいを見つけることができたそうです。
医療法人白十字会 理事長 富永雅也氏

医療法人白十字会 理事長
富永雅也氏

■富永雅也氏 インタビュー:過去の記事はこちら>>  2 3 4
1万人の療養病床担当医のうち、6,000人が不要になる
柏木: 今回は、ドキッとするテーマですね。
富永: 昨年末、厚生労働省は療養病床の位置づけを再編する方針を明らかにしました。 それによりますと、2012年度をめどに介護療養病床を廃止、医療療養病床も医療必要度の高い患者さんのみの受け皿として位置づけています。 病床は転換型老健や有料老人ホームに移行され、現在、医療、介護合計約38万床ある療養病床は6年後には約6割が削減されると報道されています(日本経済新聞2006年2月2日(木)掲載)。 削減案が、報道通り実施されるかどうかは不明ですが、大きな変化がおこることは間違いありません。約半数が消滅すると推計されています。
柏木: そうなると、療養病床を担当する医師が限られてくるのではないですか?
富永: は い。現在約38万床の療養病床には占床率95%として約36万人の患者さんが入院しています。医師一人当たり36人を担当していると考えると、ほぼ1万人 の療養病床担当医がいる計算になります。その6割のベッドがなくなるわけです。診療報酬は下がっていく方向性が確認されていますので、病院は必要以上の医 師を雇うわけにはいかず、療養病床を担当する医師はこの計算上では約4,000人に限られる日が目前に迫っています。
6年後には、約6割の療養病床医が削減される
ますます一般病床から療養病床に医師が転職してくるでしょう。
医療法人白十字会 理事長 富永雅也氏
柏木: 一般病床についてはどうですか?
富永: 2 年前に約93万床の届け出があった一般病床の昨年の平均利用病床数は、約70万床(占床率約80%)です。DPC(包括払い)の拡大、平均在院日数の度重 なる短縮で、やがて一般病床の必要数は50万床近くになると思われます。何と、ここでも約40万床以上が余ることになります。70歳近くまでは働きたいと 希望される医師が大多数を占めるなか、中高年の医師にとってこの超多忙な50万床の急性期医療に従事することはあまりにもハードでストレスフルです。
柏木: そうなると今後はどうなっていくのでしょうか?
富永: 今後は、ますます一般病床から療養病床への転職希望医師は増え続けるでしょう。しかし、今までは転職も思いのままであった療養病床の門戸が急に狭まることが確定的です。さてその時、先生は療養病床で必要とされる自信はおありでしょうか。医療必要度の高い療養病床の患者さんを診るのに必要なスキルとはどういうものでしょうか。会得するのがそんなに困難な技術なのでしょうか。
やがて、約40万床が余る
バリバリの臨床医から介護の世界に転進した石橋先生
富永: 私 たちはこのような大変革の来る日は近いと確信し、この「DtoDコンシェルジュ」のインタビュー 第1〜4編にて療養病棟勤務医を募り、その意義とシステ ムをお話してまいりました。おかげさまで療養病床勤務を希望される数多くの先生方とお会いし、意欲の高い先生方に実際勤務をしていただいております。私た ちの法人内には、急性期医療からいきなり老人保健施設の施設長に、すなわち、バリバリの臨床医から介護の世界へ転進された先生もいらっしゃいます。きっか けは前施設長の体調問題で、突如その先生に白羽の矢が立ったわけですが、その転進を機会に全く新しい分野で、パイオニア精神を発揮され、現在その領域に新 風を吹き込まれ輝いていらっしゃいます。
その先生は石橋経久先生で、外科医として長崎大学での研究生活を10年間、そしてわれわれの佐世保中央病院では16年間お勤めいただきました。その間、外 科学会、消化器外科学会、救急外科学会、癌学会、癌治療学会でご活躍になり、シンポジストも経験されました。佐世保中央病院では手術部長、ICU部長、外 科部長を歴任され、大変充実した外科医としての日々を送っていらっしゃいました。
介護老人保健施設サン 施設長 石橋 氏インタビュー
介護老人保健施設サン	施設長 石橋経久 氏

介護老人保健施設サン
施設長 石橋経久 氏

急性期にはない慢性期のやりがい。自分の責任で好きなように医療ができる!
柏木: 外科医時代の体験談を教えてください。
石橋: 26年間外科医として働きました。思い出としては、
(1)大学では「癌の基礎研究」に熱中
(2)佐世保中央病院では救急外科や癌の手術療法を中心にまい進したことです。また手術部長やICU部長として数多くの手術や集中治療を体験できたことが私の貴重な財産となっています。
柏木: 老人保健施設療養型へ転進しようと思ったきっかけを教えてください。
石橋: まずきっかけは、尊敬していた当施設の前施設長が病気のために入院され、佐世保中央病院より誰かが急遽後任として就任しなければならない状況になったことです。
当施設へ転進前の私の年齢は54歳で外科部長の地位にあり、先輩2名と後輩3名のちょうど真ん中に位置していました。「体力的な限界」「外科チームの若返り」「54歳の今ならまだ介護の世界でも何か新しい仕事ができる」「母親がアルツハイマー型認知症に罹患し、介護をする家族の苦しみを体験していた」等の理由があり、転進を決意しました。
転進時に、26年間外科医として積み上げてきた知識とスキルはもうこれからは生かせないんだと思うと非常に寂しい気持ちになりましたね。
■介護老人保健施設サン 施設長 石橋経久 氏
■昭和49年 長崎大学医学部卒業
長崎大学第一外科入局
外科医として最初の10年間は大学で研究や研修生活を送り、「癌と免疫」の研究で博士号を修得。その後、佐世保中央病院に就職。佐世保中央病院での16年間では外科部長・ICU部長・手術部長を歴任。外科医として26年間活躍した後、平成11年より介護老人保健施設サンの施設長として就任。外科医としてのライフワークは「癌の基礎研究と臨床」
急性期から慢性期へ。環境の変化に対する戸惑い。
柏木: 急性期から慢性期という大きな環境の変化に戸惑ったことも多くあるのではないですか?
石橋:

急性期病院で26年間勤務してきた外科医にとって、患者さんの疾患も病態も今までとは全く異なる介護の世界は別世界で、2カ月くらいは毎日戸惑っていました。具体的には、

 1.ほとんどの方が認知症であること。
 2.急性期と違って、病態にほとんど変化がないこと。
 3.多数の病気を持っている方が入所されているので、突然死されることが多いこと。(入所者の平均年齢は83歳)
 4.スタッフの違い。病院では大半が看護師ですが、ここではケアスタッフが大半を占めること。

といったことに、戸惑いがありましたね。

柏木: 慢性期医療への転進当時のお気持ちをお聞かせください。
石橋: 転進当時54歳で、それまで外科医として培ってきた知識とスキルが98%役に立たない慢性期の世界へ転進するということで、それに見合うものをここで作り上げないと意味がないと考えました。
急性期にはない、慢性期のやりがい! 自分の責任で好きなように医療ができる!
柏木: 慢性期医療のやりがいは何でしょうか?
石橋: 急性期医療は患者さんの生死がかかっています。以前は、毎日緊張感の中で、チームメンバーと共感しながらオペを行っていました。慢性期医療のやりがいは、全部一人でできることです。一人の入所した患者さんに「今まで培ってきた知識とスキル」に新しくリハビリを入れ込んで、その方専用のプランを作り上げる。それにそってスタッフを自分の責任で動かすことができます。そのためにはもちろんリハビリについて勉強しないといけませんが…。患者さんはほぼ100%に近い状態で退院されていきますので、大変感謝されます。また、療養型の疾病は内科や整形、リハビリまでとても幅広いので、それまで培ってきた急性期の患者さんを診る目とあわせると、患者さんを診る目がとても広くなりました。それと、日々スタッフが成長していく場面を見ると嬉しくなります。ここへきて初めて「トップの意識が変わらないとスタッフも変わらない」ということに気がつきました。
■ 慢性期医療のやりがい ■
●チーム医療ではないので、自分の責任で好きなようにできる●
(ひとりの患者さん専用のプランを作り上げる)
●療養型の疾病は幅広いので、患者さんを診る目が広くなる●
柏木: 入所されている患者さんへは、具体的にどういったことをするのですか?
石橋: 患者さんのADL(日常生活動作)を高めて、社会復帰を促します。
そして何より一番大切なのは、患者さまからの信頼を得ることです。患者さん(老人・認知症の人)とは、とにかくコミュニケーション、接することが大事です。
柏木: 現在の状況をお聞かせください。
石橋: 老健施設サンでは、拘束廃止運動、療育音楽療法、パワーリハビリテーション、くもん学習療法を高いレベルまで達成できました。特にパワーリハビリテーションは日本ではトップレベルとなりました。パワーリハ本部のホームページにはドクター石橋のコラム欄(http://www.powerreha.jp/ishibashi.html)もできています。
ベンチャースピリットがあれば、必ず新しい道は開けます。新しい医療・リハビリ・介護の世界があなたを必要としています。
柏木: 転進を体験された施設長より勤務医の方へメッセージをお願いします。
石橋: 急性期の病院から療養型の病院への転進は40〜50歳前後が最適と考えています。また一カ所の病院に15年以上いると、仕事がマンネリ化し勉強もしなくなり、医師として退化する可能性が高いと私は考えています。まだ余力のある年齢での転進をお勧めします。新しい職場では今までの自分は全く通じません。自分を変えるしかありません。しかし自分で新分野を開拓することができます。療養型の病院を定年退職した後の職場とは考えない方がよいと思います。そんなに甘くはありません。急性期病院以上に厳しい面もあります。特に急性期のチーム医療で永く務めた医師にとっては一部温室みたいなところもあります。
外科医からの転進で学んだことは、54歳からでも自分で自分自身を変えることにより、新しい医療・リハビリ・介護の分野を開拓できる潜在能力がまだ残っていたことです。ベンチャースピリットがあれば必ず新しい道は自分で開けます。積極的に転進しましょう。
新しい医療・リハビリ・介護の世界があなたを必要としています。
柏木: ありがとうございました。
慢性期医療を学びたい先生方へ
富永: いかがでしたでしょうか?
どこまでリアルに伝えられるかわかりませんが、石橋先生の変化の過程を私は目の当たりにして、さらに慢性期医療に対する医師のやりがいというのは、急性期以上にあるんだなと確信を持ちました。
柏木: 今回、石橋先生にインタビューをさせていただいて、新しいことにチャレンジすることで、石橋先生自身がワクワクしている気持ちがすごく伝わってきました。
富永: そうでしょう。現在、白十字会では慢性期を学びたい先生向けに働きやすい環境(国内研修制度等も含め)をこれからも強化して行きます。
白十字会で慢性期を学びたい先生は、ぜひお問い合わせをお待ちしております。
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